物語のメモ

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植物の多様な世界_02_バラ科の花

これから植物の多様性の話をする。
花の見分け方を見てもらいながら、進化と歴史の話をする予定だ。(全5回)

下記の構成なので、気が向いたところから見て欲しい。

第1回:タンポポとキクと花の進化
番外編:藻岩山と植物の見方とか(22/08/13)
第2回:バラ科の花
第3回:マメ科の花と葉
第4回:植物の進化(他の生き物との協力関係)
第5回:地球規模・宇宙規模の話

違いを生む違い

前回、キク科の花に、共通するパターンを見てきた。
今回は、バラ科について見ていこう。

今回は進化にはそれほど触れず、気楽にいこう。
なお、花の進化の概略は第1回で解説したので、気になる人はそれを見て欲しい。

バラ科

まずはバラ科の花の特徴を見てみよう。次の写真を見て欲しい。

バラ科

基本的に科が共通していると、花の作りが似通っている。そのため、具体的に何の花かわからなくても、バラ科であることがわかる。

では、バラ科の花にはどんな特徴があるだろうか?
注意して見て欲しいのは、花びらの枚数と、中心の雄しべの様子だ。
上の写真では、花びらは何枚で、雄しべはどうなっているだろうか?
一度確認して欲しい。

そのあと、下の花を見てみよう。

バラ科の2種

ナナカマドとサクラの花びらは何枚だろうか?
そして、中心の雄しべはどのような感じだろうか?

正解は、花びらが5枚で、中心の雄しべが密集している。
5枚の花びらと密集した雄しべ、それがバラ科の花の特徴だ。

ちなみに、雄しべというのは花粉を飛ばす管のことだ。さっきの写真で言うと、花の中心から出ている先端が黄色(茶色)のがおしべだ。 

花のサイズは千差万別

そして、実は、科で共通しているのは、花の作りであって、花のサイズは関係ない。

例えば、ナナカマドの花は小さい花が鞠のように密集して咲いている。6ミリ〜10ミリの花が無数に集まっている。
一方、サクラは3センチほどの花を咲かせる。

このように、じつは、科が同じだと花の作りは共通していても、サイズは千差万別だ。

もう少し、別のバラ科も見てみよう。

バラ科の2種_2

左はアロニアというベリー系のバラ科の花で、右はヤマブキだ。
どちらも、花びらが5枚で、中心に雄しべが密集している。しかし、アロニアが小さな花をたくさん咲かせるのに対して、ヤマブキは堂々とした大きな花を咲かせる。

他にも、次のような花がバラ科だ。花びらと、中心の雄しべの様子を見て欲しい。

バラ科の2種

バラ科(イチゴ)の2種

少しわかりにくいが、やはり花びらは5枚で、中心に雄しべがたくさんある。

ちなみに、バラ科もかなり種類があるので、世の中でよく見かける。

庭に咲くバラ・ヤマブキなどの庭木や、空き地にはびこるツルの草のイチゴっぽい花など、バラ科は本当によく見かける。機会があったら見つけてみて欲しい。

バラ科に似た花

ここまでバラ科の花を見てきた。では、似た花で、バラ科ではない花はどのような感じだろうか?

次の写真を見て欲しい。

花びら5枚の3種

バラ科と同じように、花びらが5枚に見える。しかし、中心の雄しべがまばらなのがわかるだろうか。
バラ科は雄しべが密集しているが、これらの花は雄しべが密集していない。そのため、バラ科ではないとわかる。

では、次の花はどうだろうか?

花2種

上の花はどちらも、花びらが5枚で、雄しべが密集している。ではバラ科か?というと別の科だ。

実は花びらが5枚の科は結構多い。そして、そして雄しべが多いこともある。
つまり「バラ科 → 花びらが5枚で、雄しべが密集している」は成り立つが、「花びらが5枚で、雄しべが密集している → バラ科」は成り立たない場合があるのだ。

しかし、草ではバラ科ではないものも多いが、木では「花びらが5枚で、雄しべが密集している 」花がバラ科以外に少ない。そのため、バラ科っぽい花の木を見たら、基本的にはバラ科と思っていい。

(先ほどのオトギリソウやキンポウゲは、同じような花だが草だった。草は似た花が結構ある)

それと、慣れてくると花だけでなく葉の特徴でも推測できる。それは次回の話にする。

まとめ

まとめよう。
バラ科の花は「花びらが5枚で、雄しべが密集している」
・科が同じ場合、共通しているのは花の作りで、サイズは千差万別
・草で「花びらが5枚で、雄しべが密集している」場合でも、バラ科とは限らない。しかし、木の場合はだいたいバラ科

では、第3回はもう1つ代表的な科の花として、マメ科を見ていく。
これまで話題にしなかった、葉についても少し見ていくので、よかったら次も読んで欲しい。

補足:園芸用の花は全然違う

(前回も少し触れたが)園芸用の花は品種改良されているため、元の花の特徴がなくなっている。
たとえば、次の写真を見て欲しい。
どちらもバラの花だが、野生に近い花と品種改良された花だ。

バラの2種

左の花が野生に近く、右の花が品種改良された花だ。
基本的に、園芸用の花は品種改良によって花が豪華に咲く。写真のような八重(やえ:花びらが重なって咲く)花は最もよく見る品種改良だ。こうなってしまうと、元の科の花の特徴はまったくわからない。

これはバラ科だけではなく、他の科でもそうだ。次の写真を見て欲しい。

園芸用の3種

バラも、マリーゴールドも、カーネーションも、元の科の花の面影は全くない。

このように、品種改良されると、花がまったく別物になってしまうのだ。

 

おまけ:合弁花と離弁花

ここからはおまけだ。花の基礎知識を少し解説する。
花には、合弁花と離弁花というものが存在する。

花びらがくっついているのが合弁花、すべての花びらが分かれているのが離弁花だ。

例を見てみよう。

花びら5枚の3種

すべて花びらが5枚に見える。しかし、じつは右のシバザクラは花びらが分かれていない。つまり、花びらが5枚どころか1枚(!?)なのだ。こういった、花びらが分かれていないものを合弁花と言う。

この合弁花・離弁花というグループは、科より大きなグループとして扱われることがある。

ちなみに、合弁花で一番ポピュラーなのはツツジだ。次の写真を見て欲しい。

ツツジ3種

花がどうなっているかわかるだろうか。
ツツジは正面から見ると、花びらが5枚で、雄しべが目立っていて、一見バラ科に似ていなくもない。しかし、ツツジは合弁花なのだ。下の写真を見て欲しい。

ツツジ(合弁花)

花びらを見ると、根元まで切れ込んでおらず、大きな1つの花になっていることがわかる。
正面から見ると意外と分かりにくいが、根本で花がくっついているのだ。
ちなみにツツジも園芸用の木としてたくさん植えられているので、機会があれば花を見て欲しい。