藻岩山と植物の見方とか(22/08/13)
夏休みで運動不足なので藻岩山に行ってきた。
藻岩山登山は往復2時間弱、かつ交通に往復1時間で計3時間のハイキングという感じだ。
植物を少し見てきたので、植物の見方と共に紹介しようと思う。
藻岩山の夏の花
慈啓会病院前から登った。この入り口がもっともポピュラーなコースで、老若男女が登るハイキングコースだ。
入り口から入って少しするとミミコウモリというキク科の花が咲いている。なんでキク科とわかるかというと、キク科はタンポポのように小さな花が密集して咲いているのだ。この写真の白い花は、実はさらに小さな花の集合体で、そういうことを知っていれば、たとえ種名(ミミコウモリ)がわからなくても、「キク科の白い花で北海道で八月に咲くやつ」ということがわかる。そうすれば、あとで調べれば種名はわかる(今回もその調べ方をした)。
キク科らしさ
なお、「花の密集しているキク科らしさ」というのは、次の花を見るとわかりやすいだろう。
ヒメジョオンもヨツバヒヨドリもどちらもキク科だ。それぞれ、花が密集している。この小さなモシャモシャしているのが、全て1つ1つの花なのだ。それがキク科らしさと言える。
進化的には、花というのは生殖方法であり、生殖方法が進化的に最も系統だっているので、だいたい花を見ると、どの科・属か推測できる。
地蔵の多い藻岩山
あと、藻岩山は地蔵が多い。調べて見ると、三十三ヶ所に観音像が設置されているそうだ。
だいたい赤いエプロンをしていて、定期的に取り替えているのかいつも綺麗だ。
のほほんとした地蔵に加え、幼稚園の団体遠足だったり、若者だったり老人だったり外人だったりが登山しているのが藻岩山だ。非常に気楽なハイキング感が漂う。
個人的には、考え事のリフレッシュとかで登ると、適度に疲れる上、歩くことで考えがだんだんまとまってくるので気に入っている。
そんなこんなをしていると山頂に着く。
山頂のさらに上には展望台があり、札幌を一望できる。風が強いので、今日は展望台は登らなかった。
下山しながら再び植物について触れる。今度は少し別の見方をしよう。
見た目による命名
花は見た目で名前がついていることが多い。先ほど、キク科がどうのこうのというのは、あくまで進化的な話だ。進化的に関係があろうとなかろうと、それ以前から人は植物を見分けていた。当時の見え方で命名していたのだ。
上を見て欲しい。ミズヒキというのは水引のことで、ご祝儀袋に結ばれている紐だ。
ミズヒキの花は、上から見ると赤く、下から見ると白く見えるので、そう呼ばれている。(写真は上からなので赤くしか見えないが)。
一方キンミズヒキは、黄色い花が穂のように咲くので、やはりご祝儀袋の金色の水引っぽいね、ということでキンミズヒキという名前になっている。
ちなみに、ミズヒキとキンミズヒキは進化的な関係は全くない。ミズヒキはタデ科で、キンミズヒキはバラ科だ。和名は昔の人の命名なので、「〜っぽいね」という見た目で決めていたりする。だから、特に関係なくても名前が似ていることがある。
装飾花
また、別の花の見方で「装飾花」というものがある。
上の写真では、花びらっぽいのはどちらも装飾花だ。なかのつぶつぶ・モシャモシャしているのが花本体だ。なので受粉は、つぶつぶした方で行われる。
紫陽花の花も装飾花だ。装飾花というのは、一見したところ花だが、実は花ではないというものだ。葉っぱが変形したものなのだ。あくまで本質的には葉っぱなので、花が枯れにくいという特徴を持つ。
本来的に、野生の花というのは受粉すれば終わりだ。その時点で実がついて枯れるのだが、装飾花はそれよりずっと長持ちする。
花の区分には、そういうのもあるということだ。
せっかくなのでもう少し花を載せよう。
ツルニンジンはキキョウ科で、エゾスズランはラン科だ。エゾスズランは普通のスズランとは関係ないので注意して欲しい。ラン科なのだ。
進化的な補足をすると、ラン科は花が左右対称で、そして、ものすごく種子が小さいことが多い。小さな種子を魚のように何万と産み、わずかな確率で成長する。ラン科は進化的には、最も分化の進んだ大きな一群で、世界に700属以上15000種、日本に75属230種する。
ラン科とキク科は植物の進化の双頭だ。キク科もまた、最も進化し、最も分化している植物とされている。世界中に約1900属3000種が知られている。ラン科ほどではないが種類が多く、そして繁殖力はラン科よりもずっと強い。たんぽぽしかり、セイタカアワダチソウしかり、あらゆる環境でのさばっている。
ちなみにランについて補足すると、ホームセンターで売っているのはだいたい外国のランだ。日本のランは、割と小さくてほんのりした花が多く、あまり園芸向きではなく、華やかさに欠けるものが多い。上の写真のエゾスズランのように。
こんな感じで藻岩山を登って来た。植物は昔取った杵柄という感じで、今でも楽しめる。ただし学生時代は鬼のように教官が厳しかったので、二度とあの頃に戻りたくはないが。
ちなみに、植物について昔やる夫スレを書いたことがある。やる夫スレ、というのは、アスキーアートと呼ばれる大きな絵文字のようなものだ。この記事で述べたような植物の見方について、かなり詳しく解説している。
やる夫とやらない夫で辿る植物の世界 というタイトルだ。気が向けばどうぞ。