植物の多様な世界_03_マメ科の花と葉
これから植物の多様性の話をする。
花の見分け方を見てもらいながら、進化と歴史の話をする予定だ。(全5回)
下記の構成なので、気が向いたところから見て欲しい。
・第1回:タンポポとキクと花の進化
・番外編:藻岩山と植物の見方とか(22/08/13)
・第2回:バラ科の花
・第3回:マメ科の花と葉
・第4回:植物の進化(他の生き物との協力関係)
・第5回:地球規模・宇宙規模の話
違いを生む違い
1〜2回、キク科の花と、バラ科の花を例に、共通するパターンを見てきた。
次のようなことがわかった。
・科が同じ花は、細かい違いを超えて共通するパターンがある。
・科が同じ場合、共通しているのは花の作りで、サイズは千差万別
・葉も共通している場合がある(New)
今回は、花を見ながら、少し葉っぱについても見ていこう。
まずはマメ科を見ていこう。
マメ科の花
まずはマメ科の花の特徴を見てみよう。次の写真を見て欲しい。何が共通点かわかるだろうか。
左から、ヤブハギ、ニセアカシア、フジだ。
ヤブハギは森の裾野に生えている小さな木で、ニセアカシアは札幌によくある街路樹だ。フジは、公園に「藤棚」としてあることが多い。(札幌だと中島公園にある)
花の形をよく見ると、この3つの花がほぼ一緒なことが、分かるだろうか?
少し分かりにくいので、細かく見ていこう。花は3つのパーツでできている。写真に1〜3の番号を振った。
1つ目のパーツとして、どれも上の方に、ひらひらしたハート形っぽい花びらがある。
2つ目のパーツとして、一番下に、貝殻のような花がある。3つ目のパーツとして、貝殻のような花を左右から包む花びらがある。
マメ科の花はこの3つのパーツからできている。
別の花も見てみよう。
センダイハギとムラサキセンダイハギだ。
はっきり見えるのは、1つ目のパーツの、上の方のひらひらしたハート形っぽい花びらだ。2つ目のパーツの、貝殻のような花は、ほぼ見えないが、ふくらみがある。3つ目のパーツは、貝殻のような花を左右から包む花びらが見える。
ちなみに、マメ科のこうした花は蝶形花(ちょうけいか)と呼ばれている。パーツの1〜3は、それぞれパーツ1:旗弁(ハート形の花びら)、パーツ2:竜骨弁(貝殻のような花)、パーツ3:翼弁(貝殻を左右に挟む花)という、かっこいい名前がついている。まあ別に名前が重要ではないので、覚えなくていい。
ところで、ムラサキツメクサを知っているだろうか。ムラサキツメクサとは赤いクローバーで、白いクローバー(シロツメクサ)と一緒によく生えている花だ。このムラサキツメクサもマメ科なのだ。
花を見てみよう。
ムラサキツメクサの花は、じつは、蝶形花がさらに集合した形だ。
上の写真のムラサキツメクサの花を、目をよく凝らすと、3つのパーツになっているのがわかるだろうか。小さすぎて判別が難しいかもしれないが、ムラサキツメクサも花の作りは共通しているのだ。
そして、共通しているのは花の作りで、サイズは千差万別なのだ。ヤブハギやヤマハギの花は、ムラサキツメクサに比べるとかなり大きい。
マメ科の小さい花をもう少し見てみよう。下の写真は、全て道端のマメ科だ。
シナガワハギ、コメツブウマゴヤシ、ムラサキツメクサ、シロツメクサの4つはどれもマメ科の雑草で、海外原産だ。どれも小さな蝶形花が集合した形になっている。
上の写真でもギリギリ判別できるくらいの小ささしかないが、目をこらすとわかるので、機会があったら見てみて欲しい。
このように、共通しているのは花の構造であって、サイズは千差万別だ。
ちなみに、1つ誤解しないで欲しいのは、花をこうして分析的に見ることと、花を楽しむのは別だということだ。
マメ科の花と知っていてもいなくても、フジの花を美しく感じることはできる。
フジがマメ科と知らなくても、藤棚を楽しむことはできる。
ただ、わかっていると、花をよく見て、より楽しめるということだ。
マメ科の葉
ここまで、マメ科に共通する花の形を見てきた。花には、進化の過程がわかりやすく刻み込まれているので、分かりやすい。
そして、科が同じだと、葉も似ている場合がある。マメ科の葉を少し見てみよう。
何が共通点か、少し考えてみて欲しい。
何が共通点か、わかるだろうか。共通点は2つある。
まず1つは、葉っぱがどれも少しまるっこいということだ。
マメ科は、だいたい葉っぱがまるっこい。
それが共通点の1つ目だ。
2つ目の共通点は「葉っぱが複数で1セット」ということだ。
次の写真を見て欲しい。
葉っぱが1セットになっている部分を赤く囲んだ。
ムラサキツメクサも、シロツメクサも、シナガワハギも、どれも葉っぱが3枚で1セットになっている。
シロツメクサは、時々、葉が4枚のこともあり、四つ葉のクローバーと呼ばれているが、3枚であろうと4枚であろうと、どちらも1セットだ。
そういう風に、複数の葉っぱが集まって1セットの葉っぱになっている、それがマメ科の葉の特徴だ。そして、必ずしも3枚で1セットとは限らない。
上の写真では、赤く囲んだ部分が1セットの葉になっている。
3枚よりだいぶ多いが、これでも1セットの葉だ。
(ちなみに複数の葉っぱが1セット=複葉と言う。別に覚えなくてもいいが)
つまり、まとめると、マメ科の葉には次の特徴がある。
・葉がまるっこい
・複数の葉が集まって1セットになっている(複葉)
また、画像では分かりにくい共通点として、「葉が柔らかい」というのもマメ科の葉の特徴だ。
触ってみないとわからないが、柔らかいことが多い。
葉のサイズも千差万別
さきほど、花の作りは共通していても、サイズは千差万別、という話があった。
同様に、葉のサイズも千差万別だ。
次の写真を見てほしい。
これはマメ科のクズと言う雑草だ。葉がとても大きく、スマホほどある。
葉は、3枚の葉が1セットになっていて、まるっこい。しかし、サイズが全然違うのだ。
葉もサイズは千差万別なのだ。
クズも、道端でよくみかける雑草だ。もし見かけたら、葉の大きさを見て欲しい。
ウルシに気をつけて
最後に少し注意喚起をしよう。。
慣れていないとマメ科に似ているのが、ウルシ(ツタウルシ)の葉だ。次の写真を見て欲しい。
葉の形が少し似ていて、3枚で1セットの葉になっている。しかし、マメ科とは無関係のウルシだ。
もし見かけても、マメ科だと思ってうっかり触らないようにして欲しい。ツタウルシは、樹木にからみついて成長するので、そういうのを見たら触らないようにして欲しい。
葉についてもう少し詳しく(追加リンク)
最後に、記事の経緯と追加リンクについて再度触れる。実は今回の記事のもとになった話がある。「やる夫とやらない夫で辿る植物の世界(2014)」という植物を紹介する話だ。今の一連の記事は、それをセルフリメイクしたものだ。
下記の2.5回で、葉について、もう少し詳しく解説している。
かなり色々な葉の形を解説したり、紅葉について解説している。気になったら見てみると面白いと思う。