物語のメモ

物語・植物・心理学・文化人類学・IT等について/月1回更新目標

エニアグラムの本能のサブタイプ(カウンタータイプ)

本記事では、エニアグラムの本能のサブタイプについてと、カウンタータイプについて書きます。
平たく言うと、本能のサブタイプとは、人が生きる上での指向性を表したもので、エニアグラムと独立しつつも影響します。本能のサブタイプには3つあります。「自己保存のサブタイプ」は自分が生き延びるという指向性、「セクシャルのサブタイプ」は生殖や子孫を残す指向性、「ソーシャルのサブタイプ」は群れの中で生きる人としての指向性、です。エニアグラムの9タイプそれぞれで、一番優位なサブタイプがあるため、エニアグラムとは掛け算方式で考えることができて、単純にいうと3×9の27のタイプがあります。
また、本能のサブタイプにおけるカウンタータイプは、9タイプそれぞれで、囚われに逆らうかのように見えるサブタイプです。たとえば、タイプ9にはもともと「怠惰」という囚われがあります。しかし、ソーシャルのタイプ9では、集団と融合しようとする、つまり、さまざまなグループの一員になるために努力することで、自分の内面とつながるのを避けようとします。そのため、グループ活動に身を入れるので、逆に活動的になります。その意味でソーシャルのタイプ9は、カウンタータイプと言えます。つまり、自身の囚われに逆らうサブタイプ、あるいは逆らうかのように見えるサブタイプということです。

これから本能のサブタイプとカウンタータイプについて詳しく見ていきますが、一つ注意点です。
カウンタータイプを提唱しているベアトリス・チェスナットは、リソ派ではなく、ヘレン・パーマーの弟子にあたり、著作中でも一度もリソの名前を出していません。そして、リソ派の方でもカウンタータイプについて全く言及していません。つまり、「本能のサブタイプ」の理論はリソ派の理論にもありますが、「カウンタータイプ」はリソ派の理論とは独立しています。その点だけご注意ください。(なお、ベアトリス・チェスナットの著作の妥当性については、後で詳しく論じますが、アマゾンの評価数700超で星4.5くらいありますし、ある程度信頼できると思います。)

先に記事中の参考文献(出典)について述べておきます。
ベアトリス・チェスナットの書籍 The Complete Enneagram: 27 Paths to Greater Self-knowledge  をもとに、引用やまとめをします。

では本題に入ります。

 本能のサブタイプ

まず、本能のサブタイプの概説からです。
さきほど述べたように、本能のサブタイプは人が生きる上での指向性を表したもので、エニアグラムと独立しています。
(さきほど、それぞれのタイプで、一番優位なサブタイプがあるという話をしました。さらに、リソによると、盲点となる一番弱いサブタイプもあります。優位点と盲点については、最後に補足します。または、グーグル検索で「エニアグラム 本能のサブタイプ 盲点」などと検索して見てください)

自己保存、ソーシャル、セクシャルについて詳しく見ていきましょう。
自己保存のサブタイプは、生存と物質的安全に関連する問題に注意を向けるサブタイプです。十分な資源を持つこと、危険を避けることなど、安全と安心に関わることにエネルギーを向けます。
ソーシャルサブタイプは、社会集団への帰属、承認、関係性に関する問題に注意を向けるサブタイプです。家族や地域社会、自分が所属するグループなど、「群れと仲良くする」ことを重視します。
セクシャルサブタイプは、特定の個人との関係の質や状態に関する問題に注意を向けるサブタイプです。「1対1」の本能と呼ばれることもありますが、一般的には、性的なつながり、対人関係の魅力、絆の達成と維持にエネルギーを向けます。
※セクシャル本能は、単純に「性的」というより、何か特定のものにフォーカスをして、それとの関係性を重視するということです。何か特定の相手と融合や統合したい思いがありますが、相手が人とは限りません。

カウンタータイプ

では、こうした基本を踏まえて、カウンタータイプを含む本能のサブタイプについて見ていきましょう。
さきほど述べた通り、カウンタータイプとは自身の囚われに逆らう、あるいは逆らうかのように見えるサブタイプということです。

ボディセンター
タイプ9
自己保存のタイプ9「食欲(欲望)」
自己保存のタイプ9は、自分の感情や欲求、力との継続的なつながりを感じる代わりに、物理的な快適さや、食べる、寝る、読む、クロスワードパズルをするなどの日常的な活動との融合に焦点を当てています。自己保存のタイプ9は、抽象的なものではなく、日常的なものを重視する、現実的で具体的な人々です。
ソーシャルタイプ9「参加」(カウンタータイプ)
ソーシャルタイプ9は集団と融合します。自分の人生の中で、さまざまなグループの一員になるために努力することで、自分の内面とつながるのを避けようとします。内面と繋がる事への怠惰さです。楽しいことが大好きで、社交的で和やかな性格ですが、自分のことよりもグループのことを優先してしまうワーカホリックなところがあります。このような高い活動性は、3つのタイプ9のサブタイプのうちのカウンタータイプとなっています。
セクシャルタイプ9「融合」
セクシャルタイプ9は、自分の人生において重要な人と融合することで、怠惰への情熱を表現します。一人で立っているのは大変なので、無意識のうちに他人の態度や意見、感情を引き受けることになります。このタイプの人は、親切で優しく、あまり自己主張をしないシャイな性格である傾向があります。

タイプ8
自己保存のタイプ8「満足」
自己保存のタイプ8は、生きていくために必要なものを手に入れることに集中することで、欲望の情熱を表現しています。自己保存のタイプ8は、物質的な欲求をタイムリーに満たすことを強く望み、フラストレーションに耐えられません。困難な状況でも生き残る方法を知っており、必要なものを手に入れることに関しては全能感を持っています。3つのタイプの中で、最も表情豊かでなく、最も武装しています。
ソーシャルタイプ8「連帯感」(カウンタータイプ)
ソーシャルタイプ8は、欲望や攻撃性を他人のために表現します。社交的な反社会性を持つこの人は、タイプ8のカウンタータイプであり、他の2つのタイプ8のサブタイプよりも攻撃性が低く、忠誠心が強いように見える、親切なタイプ8です。「連帯感」という名前は、人々が保護を必要としているときに助けを提供する傾向を強調しています。
セクシャルタイプ8「所有」
セクシャルタイプ8は、反抗的な態度や、みんなの注目を独占したいという欲求を通じて、欲望を表現します。セクシャルタイプ8は、強烈なカリスマ性を持ち、コントロールと影響力を持ちたいと思っています。物質的な安全を求める代わりに、物や人に対する権力を手に入れようとします。「所有」という名前は、シーン全体をエネルギッシュに支配することを意味し、環境全体を支配することで力を感じたいと思っています。

タイプ1
自己保存のタイプ1「心配」
自己保存のタイプ1は、3つのタイプ1の中でも特に完璧主義者です。自分と自身の行動を完璧にするために努力することで、怒りの情熱を表現します。このサブタイプでは、怒りは最も抑圧された感情です。防衛メカニズムが怒りの熱を暖かさに変え、結果としてフレンドリーで善良なキャラクターになります。
ソーシャルタイプ1「非順応性」
ソーシャルタイプ1は(無意識のうちに)自分を完璧だと思っています。「正しい方法」の完璧なモデルになりきろうとすることで、怒りを表現します。彼らは、無意識のうちに優越感を求めており、いわば教師のメンタリティを持っています。ソーシャルタイプ1では、怒りは半分隠されており、怒りの熱さが冷たさに変わっています。冷静で知的な人格タイプで、主なテーマはコントロールです。
セクシャルタイプ1「熱心さ」(カウンタータイプ)
セクシャルタイプ1は他人を完璧にすることに重点を置き、完璧主義者というよりは改革者です。唯一、はっきりとした怒りを持つタイプで、他人を向上させたい、自分の欲しいものを手に入れたいという強烈な欲望をもち、怒りを行動に移します。改革者や狂信者のように、社会を変え、自分の望むものを手に入れる権利があると信じています。怒りや衝動を抑えようとするタイプ1の「反本能的」な傾向に逆らっているのです。

ハートセンター
タイプ3
自己保存のタイプ3 「安心」(カウンタータイプ)
自己保存のタイプ3は、「虚栄心なんてない」という虚栄心があります。このタイプ3はまた、他人から賞賛されたいと思っていますが、表立って評価を求めることは避けています。「他人からよく見える」ことに満足せず、実際に素晴らしい人になろうと努力します。人がどうあるべきかという完璧なモデルに合わせて、素晴らしい人になろうとします。完璧なモデルであることは美徳を意味し、美徳は虚栄心の欠如を意味します。自己保存のタイプ3は、善良であること、一生懸命働くこと、そして効果的で生産的であることを通して、安心感を求めます。
ソーシャルタイプ3 「名声」
ソーシャルタイプ3は、見栄を張って仕事をこなすことで達成感を得ようとします。人に見られたい、人に影響を与えたいという欲求から、虚栄心を行動に移します。スポットライトを浴びてステージに立つことを楽しみます。ソーシャルタイプ3は、社会的な階段を上り、成功を収める方法を知っています。タイプ3の中で最も競争力があり、最も攻撃的なタイプです。自分をよく見せたいという欲求が強く、企業や営業のメンタリティを持っています。
セクシャルタイプ3 「カリスマ性」
セクシャルなタイプ3は、個人的な魅力や他人をサポートするという点で、達成感を重視します。このタイプ3では、虚栄心は(自己保存のタイプ3のように)否定されず、(ソーシャルタイプ3のように)受け入れられず、その中間に位置しています:魅力的なイメージを作り、重要な他者を支えるために虚栄心が使われています。このタイプ3は、自分のことを話すのが苦手で、支えたい相手に焦点を当てることが多いです。他人を喜ばせることに多くのエネルギーを注ぎ、家族やチームのメンタリティを持っています。

タイプ2
自己保存のタイプ2「特権」(カウンタータイプ)
自己保存のタイプ2は、大人の前では子供のように「引きつける」ことで、他人が自分の面倒を見てくれるように(無意識のうちに)誘導します。誰もが子供を好きになるものですが、自己保存のタイプ2は、子供時代を終えても特別な扱いを受ける方法として、若々しい姿勢をとります。カウンタータイプであるこのタイプ2は、他人とつながることを恐れ、曖昧にしているため、プライドを見出すことは容易ではありません。「特権」というタイトルは、このタイプ2が、人に何かを与えるのではなく、自分という存在だけで愛されたい、優先されたいという願望を反映しています。若々しい姿勢に関連して、このタイプ2は遊び心があり、無責任で、魅力的です。
ソーシャルタイプ2「野心」
パワフルなリーダータイプで、聴衆をなびかせることで満足感を得られる、というプライドを持っています。プライドが最もはっきりしている、子どもっぽくないタイプ2であり、『賞賛に値する影響力のある超有能な人物である』という自身のイメージを育てています。「野心」という名前は、このタイプ2の「トップに立ちたい」という願望を反映したもので、その結果、高い位置にいることで、利点や利益を得ることができます。このタイプ2は「与えることで得る」ことが最も多く、寛大さを表現する際に、常に戦略的な視点を持っています。
セクシャルタイプ2「誘惑/攻撃」
セクシャルタイプ2は、ニーズを満たしたりプライドを満たしたりする方法として、特定の個人を誘惑します。「ファム・ファタール」のアーキタイプ(およびそれに相当する男性)に似たこのタイプ2は、自分のニーズをすべて満たし、欲しいものは何でも与えてくれるパートナーを惹きつけるために、古典的な誘惑の方法を用います。「誘惑/攻撃」という名前は、魅力的でありながらも、何らかの力を行使したいと考えているキャラクターを示唆しています。自然の力のようにエネルギッシュで、魅力的になり、人生のニーズを満たす方法として、大きな情熱とポジティブな感情を抱かせる人のことです。

タイプ4
自己保存のタイプ4「粘り強さ」(カウンタータイプ)
自己保存のタイプ4は忍耐力があります。タイプ4のカウンタータイプとして、自己保存のタイプ4は内なる痛みに直面してもストイックであり、他の2つのタイプ4ほど他人と痛みを共有することはありません。これは、愛を得るために痛みを我慢したり、何もしないことを学んだ人です。自己保存のタイプ4は、羨望に浸るのではなく、他の人が持っていて自分に足りないものを手に入れるために懸命に働くことで、羨望を行動に移します。メロドラマよりもマゾヒスティックなこのタイプ4は、自分自身に多くのことを要求し、耐え忍ぶ必要性が強く、努力に情熱を持っています。
ソーシャルタイプ4「羞恥心」
ソーシャルタイプ4は、他の2つのタイプ4よりも、より苦しみ、より羞恥心を感じ、より敏感です。嫉妬心が恥と苦しみへの集中を煽り、痛みと苦しみを強めることで自分のニーズを満たすように他人を誘惑する戦略を採用します。憂鬱な気分になることで、心地よさを感じます。また、妬みは、嘆きすぎたり、被害者的な役割を担ったり、自分の劣等感に焦点を当てたりすることでも現れます。ソーシャルタイプ4は、他人と自分を比較して自分が足りないと思うほど、他人と競争することはありません。
セクシャルタイプ4「競争」
セクシャルタイプ4は、自分が不足しているという苦しい感情を払拭しようとする無意識の方法として、他人を苦しめます。自分の苦しみを否定し、恥じるよりも恥じないようにすることで、自分の欲求をより強く表現し、他人に要求することができます。自分が一番であろうとすることで、競争という形で嫉妬を表現します。彼らは「欲しがる羨望」を表現し、心の中の欠乏に対する痛みを、必要なものが他人から得られないことに対する怒りの感情に無意識のうちに変えてしまうのです。

ヘッドセンター
タイプ6
自己保存のタイプ6 「温もり」
自己保存のタイプ6は、恐怖の情熱を、保護、友情、そして他者との結束の必要性として表現します。保護のための同盟を求めて、自己保存のタイプ6は、暖かく、親しみやすく、信頼できるように努力します。これが、"温もり"という名前の理由です。怒りを表現するのが苦手で、不安を感じ、自分に自信が持てないタイプです。恐怖は不安として現れ、世界でより安全を感じる方法として、人間関係に焦点を当てます。
ソーシャルタイプ6 「義務」
ソーシャルタイプ6は、抽象的な理性やイデオロギーを頼りに不安に対処することで恐怖を表現します。ルールが何であるかを知ることで権威に従うことは、世界で安全を感じるのに役立ちます。自己保存のタイプ6とは異なり、このタイプ6はより確実性があり、不確実性の不安に対処する方法として、物事を「確信しすぎる」ことがあります。ソーシャルタイプ6は、正確さと効率性を重視します。彼らは、保護された権威を持つ形として、どんなガイドラインでも遵守します。
セクシャルタイプ6「強さと美しさ」(カウンタータイプ)
セクシャルタイプ6は、強さと威圧感をもって恐怖に立ち向かうことで恐怖を表現します。他人よりも自分を信頼しているこのタイプ6は、「恐れているときには、最良の防御は最良の攻撃である」という内なるルールがあります。敵を遠ざけるために、行動も見た目も力強い姿勢をとります。攻撃に直面したときの技術と準備によって、不安は和らげられます。

タイプ5
自己保存のタイプ5 「城」
自己保存のタイプ5は、境界線に焦点を当てて強欲さを表現しています。聖域に "閉じこもりたい "というニーズがあり、侵入者から守られていると感じられたいし、自分の境界線をコントロールしたいのです。自己保存のタイプ5は、壁の中に隠れることができ、その壁の中で生き残るために必要なものがすべて揃っていることを知ることに情熱を持っています。3つのタイプ5の中では最も表情に乏しく、他人に依存しないように自分のニーズや欲求を制限しようとします。
ソーシャルタイプ5 「トーテム」
ソーシャルタイプ5は、「超理想」を求め、(感情的なつながりではなく)知識や価値観を共有することで、共通の関心事を持つ他者と関係を持つことで、強欲さを表現します。このタイプ5では、「強欲さ」は「知識」と結びついています。人への欲求や、人間関係がもたらす糧への欲求は、情報への渇望へとつながります。「トーテム」とは、高い理想への情熱、専門家を理想とし、このタイプ5が支持する究極の価値観につながる知識を求める必要性を意味します。ソーシャルタイプ5は、人生が無意味であると感じないように、人生の究極の意味を探すことに従事します。
セクシャルタイプ5 「自信」(カウンタータイプ)
セクシャルタイプ5は、絶対的な愛の理想的なモデルを探すことで、強欲さを表現します。ロマンチックな傾向を持つタイプ5です。名前の由来は、理想的な信頼関係を築く相手を求めているからです。タイプ5の中で最も感情に敏感で、より苦しみ、よりタイプ4に似ていて、よりあからさまな欲望を持っています。生き生きとした内面を持ち、それは芸術的な創造によって表現されることもありますが、多くの点で他人から切り離されています。

タイプ7
自己保存のタイプ7「城の番人」
自己保存のタイプ7は、同盟を結び、優位に立つ機会を作ることで、大食い(gluttony)を表現します。現実的で利己的なこのタイプ7は、ネットワークを作り、生存に必要な機会に注意を払うことで安全を確保します。「城の番人」という名前は、彼らが安全と欲求を満たすために、党派的なネットワークを確立する方法を意味しています。陽気で愛想がよく、快楽を好み、欲しいものはすぐに手に入れる傾向があります。
ソーシャルタイプ7「犠牲」(カウンタータイプ)
カウンタータイプであるソーシャルタイプ7は、他人のために奉仕しようとする意識的な努力を通じて、大食いに対抗します。他人を利用することを避けたいという意識から、善良で純粋でありたいという欲求があり、自分の欲求を犠牲にして他人の欲求をサポートしたいと考えています。自分の欲望を犠牲にしてでも、良い人だと思われたいという情熱を持っています。禁欲的な理想を表現し、わずかなお金でやりくりすることを美徳としています。理想主義と熱意を表現することで、自分が世界で活躍していると感じられるようにします。
セクシャルタイプ7「暗示されやすさ(Suggestibility)」
セクシャルタイプ7は、現実よりも優れたものを想像したいという欲求から、大食い(gluttony)を表します。より上質な世界が大好きで、理想的な夢想家であり、空想の中で生きることに情熱を持っています。セクシャルタイプ7は、恋をしている人のように楽観的に物事を見て、バラ色のメガネで世界を見ています。"暗示されやすさ"とは、ややナイーブで催眠術にかかりやすいことを指します。明るく情熱的で、ワクワクするような可能性や楽しい空想に焦点を当て、自分は何でもできると信じています。
出典:The Complete Enneagram: 27 Paths to Greater Self-knowledge

カウンタータイプの検討

では、こうしたカウンタータイプの妥当性について検討します。検討方法としては、自身の実感と、英語圏掲示板であるredditにおける議論を用います。
(※redditについて補足します。redditとは英語圏掲示板で、カテゴリがsubredditに分かれています。その中の一つにエニアグラム(Enneagram)のsubredditがあります。エニアグラムのsubredditには、2021年5月現在で6.7万人のメンバーがいます。また、redditでは、議論の際に賛成や反対を投票することができ、より同意が多い意見が上位にあがってきます)
まずは、エニアグラムのsubredditにおける、チェスナットについての議論を一部抜粋します。

スレッド:チェスナットのサブタイプ描写は正確か?

kyrira1789
チェスナットが好きだ。今朝、描写が好きで共感していると言及したセクシャルの8がいました。私はセクシャルタイプではありませんが、ストレートな説明が好きです。なぜならば、わりと率直に言われるのが嬉しいからです。
とはいえ、チェスナットがすべてではありませんが、知れば知るほど自分自身を理解することができます。引き続き読んで、探求してください。私は、統合の手段として異なる視点を理解する方法として、混合することにはメリットがあると思います。

amudrilamere
チェスナット氏のセクシャル7の説明は私にぴったりですが、他のタイプについてはわかりません。私はいつも、複数の情報源を考慮することが最善だと考えています。

Gladys791
それは私にとっても同じです。セクシャル1の描写は、私が言葉にすることができない私の内面のプロセス全体を表しています。他の人がなぜ共感できないのかわからないのですが、もしかしたらこれはセクシャルのことなのかなと思いました。

MirrorLogician
ここには彼女のファンがたくさんいるので、このようなことを言うのは避けていました。でも、せっかくだから...。
いいえ、私はチェスナットの本能とサブタイプに対するアプローチは完全に間違っていると思います。彼女の説明は恣意的であり、本能についてのより深い理論に基づいていません。また、サブタイプに関するナランホの独創的な指摘の多くを歪曲しています。彼女は、カウンタータイプの考えを、あまりにも大きく押し出している。このようなことから、無限の誤解やミスタイプが生じています。
私は、ナランホのオリジナルの記述を維持するか、リソ&ハドソンのアプローチに移行することをお勧めします。
ここで一つ強調しておきたいのは、チェスナットとリソ&ハドソンのアプローチは相容れないということです。それにもかかわらず、多くの人がこの2つを混同しています。自分の本能のサブタイプを決めようとして、チェスナットの説明で自分の優位な本能を理解しようとすることから始めようとしている人は、みんな間違いを犯しているのです。
以上のことから、サブタイプの章を除いた場合、私はチェスナットの本を気に入っています。多くの人にとって、この本のポイントはサブタイプにあるので、変に聞こえるかもしれませんが、まあ...。

スレッド:カウンタータイプ4ってどんなタイプ?

MirrorLogician
私は、自己保存のタイプ4がどのように「外見上の感情」を持つべきかという論争は、常に非常に混乱を招くものだと思います。
私の経験では、自己保存のタイプ4はわざわざ「不特定多数」の人に自分の気持ちを表現することはありません。他人の顔に自分の感情を吐き出すよりも、自分の中にとどめておくことを好むでしょう。だから、ナランホが自己保存のタイプ4で表現したことは、とてもよくわかります。また、一般的に自己保存の本能が人を内向きにするということと完全に一致しています。これは良いことだと思います。
そうは言っても、私の経験では、表面を少しでも掘り下げれば、自己保存のタイプ4の4らしさは、他の4と同様に強く出てきます。ある程度信頼できる人と話していれば、他のタイプ4と同じように感情が表に出てきます。そして、自分がどう感じているか、自分が何者であるかについて、すべての4と同じように意識しており、特定していることを明らかにします。彼らが心を開くと、典型的なタイプ4の特徴がすべて見られます。
これは、自分が何者で、物事についてどう感じているのかを理解するのに苦労するタイプ9とは全く対照的です。タイプ9が自分自身を本当に表現するようになるには、本当に忍耐強い仕事をしなければなりません。しかし、自己保存のタイプ4はそうではなく、自分を押し付けることはなくても、話を聞いてくれる人には簡単に自分を表現することができます。4の特徴の他の部分に共感できない多くの人は、それを「ただの自己保存のタイプ4である」と正当化しようとしますが、それは間違っています。確かに、自己保存のタイプ4は「顔に出ていない」ですが、少し近づいて見れば4であることに変わりはありません。
ですから、確かに自己保存のタイプ4はより静かで控えめだと思います。しかし、このことは、多くのタイプ9が自己保存のタイプ4の説明を誤解し、そうではないのに自分のことを説明していると思ってしまうことにもつながっています。つまり、一方では、自己保存のタイプ4は実際に存在するものですが、他方では、常にミスタイプの原因となっているのです。

Simple_Narwhal
これには全く同感です。私は自己保存のタイプ4です。自己保存のサブタイプは、ネガティブな感情を避けず、ポジティブではなく、自分とは無縁の存在です。他のタイプ4と同じように、暗くて悲しいのです。違いは、他の4と比べて、自分の暗さや感情の起伏を恥じているので、それを隠すために大きな努力をすることです。しかし、この努力は常に成功するとは限らず、ストレスを感じた時には間違いなく表に出てきます。また、自己保存の4を知っている人は、彼らの中の4をはっきりと見ることができます。「晴れやかな」外見は演技や希望であって、自然なものではありません。
追記:また、私自身のことを言えば、4の「暗さ」や「ドラマ」は、自分でも気づかないほど自然なものなので、かなり頻繁に自然に出てきます。私が言いたいのは、自己保存のタイプ4でも4であることに変わりはなく、4であることを屋根の上から叫ぶことが少ないだけだということです。

個人的な感想としては、
MirrorLogicianなどとほぼ同意見で、エニアグラムのタイプそれぞれで、もともとのタイプの囚われに逆行するカウンタータイプのようなサブタイプがあるように見えるが、それは単に「顔に出ていない」だけで、近づくとそのタイプであることには変わらないと思います。つまり、「自身の囚われに逆らっているように見える」だけで、実際に「逆らっている」わけではないと思います。
チェスナットは著作で次にようにはっきり述べています。

9つのタイプのそれぞれに、「カウンタータイプ」と呼ばれるサブタイプがあります。どのような場合でも、エニアグラムの9つのポイントごとに、囚われのエネルギーの流れに沿った2つのサブタイプと、逆さまになっている1つのサブタイプがあります。つまり、他のタイプとは似ても似つかない、囚われのエネルギーの主な方向性に逆らうタイプです。3つのサブタイプのうち「カウンタータイプ」と呼ばれています。例えば、カウンタータイプの中で最もよく知られているのは、「カウンターフォビア」のセクシャルシックスです。怖いもの知らずのシックスです。シックスの情熱は「恐れ」ですが、セクシャルサブタイプは、恐れに対処する方法として、強く威圧的であることで恐れに対抗します。

しかしこれは恣意的です。単に外面的にそう見えるだけで、実質的には「カウンタータイプ」も他のサブタイプと同じように、単なるバリエーションの一つだと思います。たとえばカウンタータイプのタイプ9について検討してみると、活動的で、一見囚われに逆らうように見えますが、実際には「自分との関係性において怠惰」であることには変わりなく、自分を麻痺させる手段として集団活動に打ち込んでいるのですから。自分にもタイプ9のソーシャルの知人がいますが、かなり活動的で、集団に溶け込みます。また、私はタイプ4の自己保存という「カウンタータイプ」ですが、タイプ特有の囚われに逆らっているというより、単にみんなの前でそれをひけらかす必要がない、というだけです。もしタイプ特有の囚われに逆らうとすれば、やはりリソ派の理論における「統合の方向」への努力が鍵になると思います。

また、もう一つの課題は、チェスナットはウィングをほぼ考慮に入れていないことです。(個人的な印象では)例えばタイプ9は、ウイング1の方がウイング8より活動的に思えますが、それが実際ウイングによるものなのか、チェスナットのいうような本能のサブタイプによるものなのか、よくわかりません。

しかし、ウイングを差し引いても、チェスナットの各サブタイプの描写はかなり正確に感じられます。この点はかなり有用かと思います。

また、もう一つ参考程度に考えられるのは、カウンタータイプの考えはタイプの誤認に影響するかも、ということです。例えば、ソーシャルのタイプ9は、タイプ3のように見えるかもしれません。また、例えば、私はカウンタータイプのタイプ4(自己保存)ですが、おそらく他人から見ると、自分の悲嘆に沈み込んでいるようにあまり見えないため、別のタイプに見える可能性があります。

結論

チェスナットのカウンタータイプは、理論というより印象です。なので、理屈については話半分に聞くのが良いと思います。しかし一方で、サブタイプごとの描写はかなり正確に思えます。これは師匠のヘレン・パーマー譲りなのか、かなり詳しく描写されており、参考になります。
なので、カウンタータイプの話は、話半分に聞きつつ、描写については参考にする、という用い方が個人的にはあっていると思います。
もし、カウンタータイプを真に議論するとなれば、各タイプのウイングとの関係や、統合の方向、あるいは分裂の方向との関連の中で議論が必要だと思います。

補足:本能のサブタイプの優位と盲点

途中少し触れた、本能のサブタイプにおける優位と盲点について触れます。

本能のサブタイプは、自己保存、セクシャル、ソーシャルと3つあります。人それぞれで、特に強いサブタイプと、特に弱いサブタイプが存在します。特に弱いサブタイプは盲点と言われます。

例えばある人は以下のような強さの程度になると考えられます。

Aさん:自己保存>>>セクシャル>>>(超えられない壁)>>>ソーシャル(盲点)
Bさん:ソーシャル>>>自己保存>>>(超えられない壁)>>>セクシャル(盲点)

特に弱いサブタイプは盲点になりがちで、それを見過ごしてしまう問題が生じます。例えばソーシャルのサブタイプが特に弱いと、社会的な関係の中での自分の位置に頓着しなかったりします。また、自己保存のサブタイプが弱いと、金勘定に弱かったり食事や健康をないがしろにしがちです。また、セクシャルが弱いと、恋や物事に夢中になるという経験が乏しくなったりします。
強いサブタイプも同様に問題を引き起こす可能性がありますが、それは逆にこだわりすぎるためです。ソーシャルが強いと、社会的な活動にあまりにものめり込みすぎて問題が起きたり、セクシャルが強いと、いろんな人や物事に熱中しすぎてしまったりします(色々な人と恋に落ちたり)。自己保存が強いと、金にこだわりすぎるあまり問題を引き起こしたり、安全にこだわりすぎるあまり問題を起こしたりします。例えば、金を手に入れようとギャンブルですったりですね。
(※このあたりの解説は、リソの実践編や公式サイト(の The Three Instincts の章)あたりが一番詳しいと思います)

また、どこで読んだか失念しましたが、本能のサブタイプの強い順番は、人の相性にも影響しています。同じサブタイプが強い相手が「気が合う」という感じになります。
例えば、自己保存が1番強くて、セクシャルが2番目に強い人は、エニアグラムのタイプ自体の相性とは別に、いろいろなタイプの、自己保存が1番強くて、セクシャルが2番目に強い人と相性が良いです。最低でも、セクシャルが1番強くて、自己保存が2番目に強い人と相性が良いです。逆に、ソーシャルが強い人とはそれほど相性が良くない可能性があります。